横 笛


葉 二
 博雅三位(源博雅)が朱雀門の前で笛を吹いていると、ある夜、見知らぬ人がやってきて、一緒に吹くようになった。笛を交換したところ、その音は絶妙で青と赤の葉がついていた。これにちなんで「葉二」と名付けたという。

柯 亭
 蔡色は嘗て柯亭に至り、その亭の椽が竹で作られているのを仰盻し、「よい竹だ」と、とって笛とした。その笛は遼亮と鳴り響いた。
こんな風にも伝えられている。
蔡色が呉の人に語ったというのである。
「私は昔、會稽の高遷亭を通ったことがある。亭の東の第十六番目の竹の椽を見て、笛によいと思った。取って笛を作ったら、思った通り、良い音色だった」
 この笛が日本に伝わり、宇治の平等院に収められていたという。

大水竜
 村上天皇の御物。昔、唐の商人が海難に会いそうになった時、笛を海中に投げ込んで、海を鎮めた。後、黄金と引き換えにこの笛を取り戻そうとしたところ、海中から竜が現れ、笛を返して黄金を呑み込んだ。ここから「大水竜」の名が出た。

蛇 逃
 清原助種の先祖、伶人助元が府役を怠ったため左近府の下倉に禁固された。蛇や蝎の住む所だと恐れていたところ、案の定、夜中に大蛇が現れた。頭は獅子のようで、その眼は鋺のように大きい。三尺もある下を差し延べ、大口を開けて呑もうとする様子だ。助元は肝をつぶしたが、これが最後と、腰から笛を抜き出し、還城楽破を吹いた。大蛇は近寄って来たが、止まって首を上げ、笛の音に聞き惚れる様子であった。やがておとなしく引き下がって行ったので、助元は難を逃れた。その笛が助種から公時卿に譲り渡され「蛇逃」の名をもらったという。