龍笛の作り方


1.龍笛の素材

 龍笛の素材は、古い民家の囲炉裏やかまどの上で百年以上、二百年近くも煤で燻された竹を使う。民家を解体する際に譲ってもらうのだが、その中から、竹の質が良くてちょうど良い太さの虫食いのないものを選ぶ。

 龍笛本体に使われる竹は、煤が充分にかかった篠竹である。
篠竹とは女竹の一種であるが、節間が長いので笛の素材に最も適している。
龍笛の材料には、本体と頭管とがある。
本体には篠竹を使用するが、頭管には真竹を使用することが多い。



2.龍笛の寸法

 龍笛は、長さが約402mm、外径が約23〜24mm、内径が約12mm〜13mmである。



3.龍笛の作り方

1)切削工程
 素材の竹を本体用に約325mm、頭管用に約100mmの長さに切り、本体では節の部分を管尻に用いるので、内径が12mmくらいになるように錐と小刀で孔を刳る。
次に、棒状のヤスリや粗めのサンドペーパーを使って、管内に凹凸がなくなるまで丁寧に磨く。
そして、小刀で管尻の外周の出っ張りを取り、本体の竹の表皮を削り取る。

2)孔開工程
 歌口と七つの指孔を開ける際には、まず寸法取りをした後に孔の外径を鉛筆で書いて型を取っておく。それから中心部に錐で下孔を開け、小刀で竹の繊維に逆らわないように型に添って奇麗な楕円になるように削る。
歌口は17×13.5、指孔では、六の孔が13×11、中の孔が12×11、夕の孔が12×10、上の孔が11×10、五の孔が11×10、干の孔が10×9、次の孔が約10×9程度に開ける。

3)漆塗工程
生漆)
 生漆の塗布は、漆の素地固めが目的である。竹の先端に脱脂綿を絹布で包んだ塗り棒を使って、生漆を管内全体に行き渡るように一回だけ塗布する。その後、温度25℃、湿度80%の条件を保つことができる桐箱の中で乾燥させる。
下地漆)
 下地漆は、砥粉を水で解いたものにほぼ同量の生漆を混合して作る。
これを管内に塗り、数日間乾かして、サンドペーパーを巻き付けた磨き棒を使って磨く。この工程を何十回も繰り返して行うことにより、管内の形状を整えていく。下地漆を何回も塗り重ねることにより、音を引き締める硬い内壁の層を形成する。そして、音程の変化を確かめながら磨いて調整する。内径が整った後、下地漆の上から再度、生漆を塗布する。最後に目の細かいサンドペーパーを巻いた磨き棒で管内を丁寧に磨く。

朱塗り)
 朱漆は、朱合漆と同量の朱の粉を混ぜて練り合わせ、小さな埃を取り除くために吉野紙で静かに絞って漉す。漉し取った朱漆を塗り棒と筆を使って、管の内部と歌口の外周や指孔の壁に均一に塗る。
朱漆は二、三回程度、塗りと乾燥を繰り返して仕上げる。

4)頭管工程
 頭管に継ぎ管を通して本体に取り付け、膠を使って接着する。

5)装飾工程
蝉)
 蝉は黒檀の板に彫刻を施したもので、それを装飾として頭部の裏側に接着する。
へぎ板)
 笛の形に丸みを持たせるために、巻きを施すところに厚さ1〜2mmのへぎ板(檜の皮)を接着する。指孔と指穴の間の部分には、和紙を巻いて膨らみをつける。

巻き)
 巻きには桜樺巻きと籐巻きがある。
桜樺巻きの場合、桜の皮を平らに伸ばし表面と裏面をサンドペーパーを使って軽く磨いた後、幅1.5〜2.0mm程度の短冊状に切って作る。
この短冊状の樺を木工用ボンドで接着して、10m〜20m(龍笛一本分)につなぎ合わせる。そして、樺の幅を揃え、面取りをしてから、接着剤を使用して、本体に巻いていく。

谷刳りと猫掻き)
 歌口と指孔の部分の管の外周に谷を刳ることにより、奏者の唇と指の当たりを滑らかにする。(谷刳り)
それから、谷刳りをした部分と頭部に竹の繊維の柔らかい部分を取り除く加工を施す。(猫掻き)

巻き部の漆塗り)
 巻き部には生漆を薄く塗って乾燥させ、次に呂色漆を塗る。
さらに、砥粉をテンピン油で溶いて生漆と少量の松煙を練り合わせて作った埃漆を塗る。半乾きの時点で、柔らかい紙で縦方向に埃漆を拭き取る。
これにより、巻きの山の部分は呂色漆で艶が出て、谷の部分は埃漆が残っているため艶消しの色に仕上がる。

頭部仕上げ)
 笛全体のバランスを取るために、重さの調節をする。
頭部に鉛の重り(直径8mm〜10mm、長さ3cm〜5cmの円筒)を和紙で巻いて挿入する。また、柔らかい木に赤地の金襴錦布を覆うように接着して、最頭部に埋め込む。

注)上記は一般的な龍笛の作り方であり、特定の笛師の作り方を紹介している訳ではありませんので、その旨ご了解頂きたいと思います。
龍笛の作り方は笛師によってすべて異なり、それぞれに固有の技術を保持しておられることは言うまでもありません。ここで紹介しております内容は、笛師の丹念な作業の一端を知って頂く上での参考資料とお考え頂きたいと思います。